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No.3-4 業務改善への抵抗 ー現在性バイアスと確実性バイアス

 当然のことながら、業務をより効果的、効率的に進められるように改善していくことは、多くの人が望ましいことであると考えるはずです。ところが、実際に改善策を導入しようとすると、新しい仕事のやり方に抵抗感を持つ人は少なくありません。なぜでしょうか。そこには二つのバイアスが影響するからと考えられます。

 第一に現在性バイアスと言われているもので、将来得られる利得よりも現在払わなければならないコストの方が重く感じる現象のことです。新しいやり方を覚えるためには新たなスキルを獲得しなければならない事が多く、新たなスキルを獲得するための努力が必要となりますが、それを避けようとする心理が働くためです。これは心理的コストになります。また、新たな方法を学習するにせよ時間をとられることになります。つまり時間的なコストが発生するわけです。比較的多くの人がこれらのコストを忌避するが故に従来の方法にしがみついてしまうのです。

 第二に確実性バイアスというものがあります。新たな方法の方が長期的に考えて合理的であると考えられるとしても、やり方を変えた当初は慣れていないが故に一時的に生産性が低下します。この一時的な生産性の低下を嫌っていつまでも古いやり方にしがみつく、ということが少なくないのです。

 あるいは、単に自分の好きなやり方、やりやすい方法から離れたくないということも多いのではないでしょうか。かくして、こうした組織では変革が進まないわけです。
 改善策の導入を有効なものにしていくためには、次のようなことが必要になります。

  • なぜ、より効果的・効率的なやり方へと変えていかねばならないのか、その理由を明示すること
  • その理由の背景となる将来ビジョンを普段から部下に示しておくこと
  • 一時的な生産性の低下を許容し、それが許容されることについて組織内の共通認識とすること
  • 変化し続けることが評価される風土を作り上げること
  • 特に、顧客や社会への貢献、あるいは、自己成長といった観点から部下の感情に訴えていくこと

 理屈だけで部下は動いてくれません。(初回掲載2013/07/22 補筆2023/03/28)

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