エンゲージメント向上のための働き方改革が優先課題に
1.エンゲージメントが重視される背景
近年、我が国では世界でも希に見る少子高齢化が進んでおり、人材確保の困難度が増しています。ISO30414による人的資本情報開示のガイドライン制定、人的資本開示の義務化、エンゲージメントと役員報酬の連動など、企業等の人材マネジメントにおいて従業員のエンゲージメントを重視する傾向が、我が国のみならず、世界的に高まっています。
働き方改革として給与や労働条件といった働きやすさを改善する取り組みが盛んですが、一方、仕事そのもののやりがいを高めていく取り組みをなおざりにしていると優秀な人材が定着しません。また、組織としての明確なパーパスとビジョンを提示し、存在意義を明確に打ち出せるような組織でなければ、やはり、優秀な人材の確保はおぼつかないでしょう。理念やビジョンが曖昧な組織に無頓着に就職しようとする人は、おそらく問題意識や成長意欲が高くはない人材であろうと思われます。調査会社や人材サービス業界による各種意識調査からは、優秀な人材ほど組織を様々な視点、特にパーパスへの共感と言った観点から組織を評価しているようですし、裁量権の大きさや成長感なども重視されていることが見て取れます。
秀逸なビジネスモデルを備えていたとしても、優秀な人材を確保・定着させられなければ会社としての業績は望めず、従業員エンゲージメントの向上は組織経営において極めて優先度の高い課題となったのです。
2.働きやすさの改革のみならず、働きがいの改革へ
多くの組織が働き方改革に取り組んでいますが、その内容はどのようなものでしょう。おそらくは、時間外勤務の削減、休暇取得の促進、あるいは、給与のベースアップなどが中心ではないでしょうか。つまり、多くの組織が取り組んでいる働き方改革の内容は働きやすさの改革が中心です。これらは必要なことではありますが、それだけでは人材マネジメントにおける両輪が回っているとは言えません。もう一つの車輪、すなわち、働きがいの改革が同時に必要になるのです。
そもそも、働きやすさに影響する満足要因は一度整えたとしても時間の経過と共に価値を失っていきます。給与においてはベアや定昇に対して当初は満足したしても、やがてもっと高い給与がほしくなるものです。最新の設備やアプリケーションを導入したとしてもやはり時間と共に老朽化・陳腐化していきます。こうした外発的要因をいくら改善したとしても、その満足による意欲の高さは一時的であって長続きするものではありません。
一方、働きがいを高めていくことは内発的要因に働きかけることになります。真に達成感を得られるような目標に取り組むことができる、仕事そのものがおもしろい、他者や顧客に感謝される、この組織にいることで成長できると言った感覚です。そもそも、何のために仕事をしているのか、会社全体としての目的、あるいは、個別業務ごとの目的をはっきりさせることが重要であり、現在提示しているパーパスや理念が不明瞭なのであれば再定義を検討する必要があります。また、100%とは言えないまでも、ある程度は仕事を楽しめるように職務を再設計することや、従業員の承認欲求が日常的に満たされるようなしくみの導入やリーダーシップ改善、コミュニケーション改善も検討する必要があるでしょう。我が国企業の人材育成に関する取り組みが、先進国の中では極めて不十分であることが指摘されているように、成長を促進するしくみについても改善の余地は大きいと考えられます。
働きやすさを高めることは人材の確保・定着の重要な前提条件となりますが、それだけで業績の向上を期待することはできません。業績を高めるためには、従業員が意欲的に働くことが前提であり、そのためには働きがいの改革が必要なのです。
エンゲージメント向上プログラム
1.エンゲージメントの測定
本プログラムでは、全社員に意識調査を実施します。調査結果からどのような人事施策を優先的に講じるべきなのか、経営層や管理職層においてはどのようなリーダーシップ改革が必要になるのかを検討する手がかりとします。
(1)調査診断項目
上述した(1)働きがいと(2)働きやすさ、そして、(3)組織に対するコミットメントという3つのカテゴリーから自組織のエンゲージメントを測定します。さらに3つのカテゴリーは、それぞれ、2つの分野から構成されています。(1)働きがいは、①仕事への愛着、②自己効力感から、(2)働きやすさは、①職場風土、②労働条件から、(3)組織コミットメントは、①承認充足度、②マネジメントへの信頼から成ります。そしてこれら6つの項目はそれぞれ3つの詳細項目から測定されます。(下図)
働きがい Work Engagement
仕事への愛着*
仕事自体の楽しさ
仕事への熱意
仕事への集中
*「仕事への愛着」は世界的に広く用いられているユトレヒト大学の測定項目(①活力、②熱意、③没頭)による各種調査との比較ができるように構成しています。
自己効力感
自己決定感
成長感
貢献感
働きやすさ Employee Satisfaction
職場風土
人間関係
風土への愛着
相互支援
労働条件
給与等の処遇
職場環境
ワーク・ライフ・バランス
組織コミットメント Organizational Commitment
承認充足度
受容感
地位への満足
承認感
マネジメントへの信頼
パーパスへの共感
状況や情報・知識の共有
誇り
(2)調査方法
調査対象となる従業員の方に専用サイトへアクセスしていただき、Web上で回答していただきます。回答時間は5分から10分程度です。PCのほか、スマートフォンからの回答も可能です。
なお、調査に当たっては調査対象者に対して調査目的を明確に伝えることが重要です。また、調査結果は原則的に社内で公開することが望ましいでしょう。
(3)結果集計、および、評価分析
当社にて調査結果を集計、評価分析を行い、問題点を明確化します。調査結果からは、他社比較、同業他社比較、自社内属性別比較(役職別、職種別、年齢別、性別)が可能なほか、パルスサーベイとして定期的に実施すれば自社における経年比較も可能です。
以下は調査結果集計の例(抜粋)です。
・エンゲージメント総合スコア
・中項目別スコア(全体と属性別 一部抜粋)
・離職率に関する認識
・勤務継続意向
・属性別勤務継続意向(一部抜粋)
・詳細データ(一部抜粋)
・エンゲージメント総合スコア×勤務継続意向マトリックス
・勤務継続意向下位者の詳細項目別スコア
2024年12月まで、エンゲージメント調査と調査結果の集計報告を無料*で実施しています。こちらからお問い合わせください。
*調査および結果集計までが無料です。分析評価をご希望の場合は別途有料にて承ります。調査対象人数に制限はありません。回答者属性は基本的に年齢、役職、性別、職種の4種類です。属性を追加、細分化する場合はオプションとして有料となります。回答者属性を削除する場合は無料です。エンゲージメントに関する質問項目のカスタマイズはできません。
2.エンゲージメント課題の検討と向上策の導入
エンゲージメント調査分析結果からどのような取り組みを優先的に講じるべきなのか、法治と人治の両面から検討することが望ましいと言えます。法治とは、人事考課制度、昇給制度、昇進・昇格制度、人事面接、1on1、社内教育制度など人事管理制度を中心とした各種制度や、ハード面の職場環境整備、業務遂行におけるルール、福利厚生、社内レクレーションなどソフト面の仕組み改善が対象となります。場合によっては経営理念や製品・サービスの仕様の見直しも対象となり得ます。
一方、人治とは、役員、経営幹部、中間管理職のリーダーシップ開発が対象となります。エンゲージメントは法治と人治の両面から影響を受けていますので、それらの両面において改革を進めていく必要があります。法治の見直しでは、問題点の検討、計画策定を委員会やPTによって進めていく方法が考えられます。また、人事の改善では階層別研修の拡充が求められます。
(1)委員会、プロジェクトチームによる改善計画の策定
職場横断的な委員会(PT)を編成し、問題点の把握から改善計画策定を経て、改善策を講じます。一定期間を経た後、定期的にパルスサーベイとしてエンゲージメントの向上度を定期的に測定し、さらなる改善策へ結びつけて行きます。進行プログラムの例としては次のようなものです。
- エンゲージメント調査結果による問題点の把握
- 優先課題の設定と分科会の編成
- 各分科会による改善策検討
- 改善計画の策定
- 全体調整と詳細計画の策定
- 改善策の導入
⬇
- パルスサーベイの実施
⬇ - さらなる改善策へ
なお、人事管理制度などの設計・改善など、大がかりな取り組みが必要になることも考えられますので、個別テーマについてはさらに専門チームを設けて検討を進める必要が生じる可能性もあります。
(2)エンゲージメント向上のためのリーダーシップ研修
役員、経営幹部、中間管理職のリーダーシップ開発を進めるための研修です。
・研修カリキュラム(2日間)
- 組織とリーダーシップ
- 組織における3つの論理(能率、コスト、情感)
- 組織統治における2つの形(法治と人治)
- リーダーシップの定義
- リーダーシップ行動の考え方<グループ・ディスカッション>
- エンゲージメント向上のための人間理解
- エンゲージメントとは?
- リーダーがエンゲージメントに与える影響
- 人間行動と欲求<グループ・ディスカッション>
- 各種理論とデータに見るモチベーションの原泉
- モチベーション形成の構造
- わが国におけるエンゲージメントの実態
- ケーススタディ
- ケース1「エンゲージメントを低下させるマネジメント」<グループ・ディスカッション>
- ケース2「合理性への偏り」<グループ・ディスカッション>
- 当組織におけるエンゲージメントの現状分析と課題設定
- 事前エンゲージメント調査の結果分析
- エンゲージメントの現状分析<グループ・ワーク>
- リーダーとして改善すべき職場のルール・マネジメントのしくみ、リーダーシップ行動についての検討
- エンゲージメントを高める管理者行動
- エンゲージメントを高めることのできるリーダーの条件<グループ・ワーク>
- エンゲージメントを向上させる誘因
- エンゲージメントを高める管理者行動
- 心理的安全性を高める<心理的安全性と業績志向の自己診断>
- コミュニケーションの齟齬がエンゲージメントに与える影響
- エンゲージメントを高めるコミュニケーション手法
- リーダーシップ・スタイル
- リーダーとしての自己変容へ向けて
- 対人姿勢における自己概念と他者概念<自己診断>
- 自己概念と・他者概念が与えるリーダーシップ・スタイルへの影響
- 4つのコミュニケーション・スタイル
- 自己変容へ向けての考え方
- チーム・リーダーとしての行動計画
- 職場のエンゲージメント向上へ向けての行動計画の作成<個人ワーク>
- 行動計画の発表
- 信頼感の向上のために
(3)ジョブ・クラフティング研修<非管理職対象>
非管理職を対象とした、仕事への愛着を高めるための研修です。様々な制度・しくみを整備し、管理職層以上のリーダーシップ開発を行ったとしても、そもそも、仕事自体の面白さがなければエンゲージメントの向上は限定的です。
本プログラムは職務の捉え方を、仕事の意味、仕事を取り巻く他者との関係性、仕事のプロセス改善の3つの観点から再定義することにより、困難な目標に対する挑戦意欲と日常業務における働きがいを高めていくことがねらいです。
・研修カリキュラム(1日間)
- 働きがいと生きがいを考える
- 働きがいとは何か? 仕事にはどのような意義があるのか?<グループ・ディスカッション>
- 仕事における満足感と幸福感
- ジョブ・クラフティングで仕事の捉え方を変える
- ジョブ・クラフティングとは
- ジョブ・クラフティングにおける3つの視点
- 仕事の意味を改めて定義する
- 意味のクラフティング<個人ワーク・グループ・ディスカッション>
- 他者との関係を捉え直す
- 関係性のクラフティング<個人ワーク・グループ・ディスカッション>
- 仕事のプロセスを変える
- 「公開! 私の仕事術」<グループ内発表>
- プロセスのクラフティング<個人ワーク・グループ・ディスカッション>
- 全体発表、コメント
(4)ジョブ・クラフティング研修<管理職対象>
管理職を対象としたジョブ・クラフティング研修です。管理職にはリーダーシップの発揮が求められますが、管理職自身が仕事を楽しめることもエンゲージメントの一要素として認識すべきでしょう。非管理職対象のジョブ・クラフティング研修が実務的な仕事の捉え直しであることに対し、本研修は、マネジメント行動とリーダーシップ行動の捉え直しを、管理職自らにとって意義のあるという観点から行うものです。
・研修カリキュラム(1日間)
- 働きがいと生きがいを考える
- 働きがいとは何か? 仕事にはどのような意義があるのか?<グループ・ディスカッション>
- 仕事における満足感と幸福感
- ジョブ・クラフティングで仕事の捉え方を変える
- ジョブ・クラフティングとは
- ジョブ・クラフティングにおける3つの視点
- 仕事の意味を改めて定義する
- 意味のクラフティング<個人ワーク・グループ・ディスカッション>
- 部下との関係を捉え直す
- リーダーシップの源泉とは?<グループ・ディスカッション>
- 関係性のクラフティング<個人ワーク・グループ・ディスカッション>
- マネジメントのプロセスを変える
- 「公開! 私のマネジメント術」<グループ内発表>
- プロセスのクラフティング<個人ワーク・グループ・ディスカッション>
- 全体発表、コメント
インテレッジではエンゲージメント調査、分析評価、PTのファシリテーション、エンゲージメント向上研修の講師業務を受託しています。
2024年12月まで、エンゲージメント調査と調査結果の集計報告を無料*で実施しています。こちらからお問い合わせください。
*調査および結果集計までが無料です。分析評価をご希望の場合は別途有料にて承ります。調査対象人数に制限はありません。回答者属性は基本的に年齢、役職、性別、職種の4種類です。属性を追加、細分化する場合はオプションとして有料となります。回答者属性を削除する場合は無料です。エンゲージメントに関する質問項目のカスタマイズはできません。