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No.3-5 「問題の解決」から「課題の設定」へ

「問題とは何か」で示したように、仕事、あるいは、組織には様々な問題がありますので、ビジネスパーソンにとって仕事は常に問題解決の連続になります。しかし、その多くはすでに起きてしまった問題への対処ではないでしょうか。

 下の図は、左の三角形では矢印が上から下に向かっています。上からWhat、すなわち、問題や目標が与えられて、その解決策となるHowを考える、ということです。おそらく、世のビジネスパーソンの多くは左側の考え方に基づいて仕事に取り組んでいることでしょう。しかし、これだけですと、現在、または、過去の問題に取り組んでいるだけで、将来取り組むべきことへの対処ができなくなってしまいます。したがって、右側の三角形の考え方が必要となります。

 右側の三角形では、矢印が下から上へと向かっています。出発点は、ひとつは、事実です。例えば、「最近、顧客から●●といった要望が増えてきた」、「競合他社では▲▲の事業を立ち上げている」、「最近、■■に関する新たな技術が開発された」、などといった事実から、将来へ向けて取り組むべき課題を設定するというものです。

 また、主観も出発点になり得ます。未来の課題には正解が見えづらいものです。進んでいくべき方向は、通常、複数考えられ、客観的な答えがないのです。自分がどのような製品を作りたいのか、そのような事業を立ち上げたいのか、強力な思い(=主観)こそが原動力となります。

 日本人は、上から問題を与えられると、その解決策を考えるのは比較的得意であると思います。自動車産業で言えば、欧米の車よりも燃費の良い車を作る、耐久力のある車を作る、コストを削減して低価格を実現する、などと言うことです。しかし、自ら課題を設定するとなると、少々苦手なのではないでしょうか。日本においてイノベーティブな製品やサービスが生まれにくいのは、過去や現在に対応する仕事ばかりを優先してきたこと、主観を大事にせず、客観的なデータやロジックばかりに拘泥していたことが原因の多くを占めているように思われます。そして、それこそが、我が国の経済的凋落をもたらしてしまったのではないでしょうか。

 「設定型問題」は、従来は経営者が対処すべき領域という考え方が強かったように思われますが、管理職のみならず、一般社員も取り組むべき領域であると強く認識する必要があるでしょう。未来の不確実さは若い世代においてこそ、その影響が大きいのですから。(初回掲載2022/07/11)

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