No.5-13 仕事自体の楽しさを共有する

 「No.5-12承認感の向上のために」でも取り上げましたように、当社にて実施しているエンゲージメント調査では、最もスコアが低かったのが「仕事自体の楽しさ(仕事が楽しく、活力がわいてくるように感じる)」でした。スコアは2.60と、標準の3を大きく下回っています。企業や団体別の調査においても、本項目が最低スコアになるケースがほとんどです。なお、こうした傾向は、私が行っている調査のみならず、様々な調査機関が行っている同様の調査結果においても共通の現象として見られます。どうやら、日本人は仕事が面白くないようです。これでは、エンゲージメントが高まりにくいことは確かでしょう。

 なぜ、仕事が面白くないのか、原因には、マニュアルや統一されたルールを強制されることによる自己決定感の喪失、下手な成果主義を導入したこと、リーダーシップ教育の不足など、様々なことが考えられますが、そもそも、仕事自体に対する認識の問題があるのではないでしょうか。ここでは、部下に対して、認知の枠組みの転換(リフレーミング)を促す観点で記述します。

 多くの人が趣味を持っていますが、嫌いなことを趣味にする人はいないだろうと思います。好きなことをするのが趣味ですよね。とはいえども、皆さんは自分の趣味について100%面白いと言えるでしょうか。私の場合、キャンプが好きですが、撤収作業や自宅へ帰ってからの後片付けなどは正直なところ面白くはありません。美術館めぐりは楽しいですが、人気の展示ほど混雑ぶりにストレスを感じることがありますし、行き帰りの移動に煩わしさを感じることは少なくありません。趣味においてすら、その全てが楽しいわけではないのですよね。ましてや、仕事については、その100%が面白いはずがありません。エンゲージメントのかなり高い人においても、おそらくは同様でしょう。そして、仕事のどこが面白いか、面白くないかについては、人によって捉え方に差があります。再度、仕事以外の話になりますが、サッカーの場合であれば、点を取ることに無情の喜びを感じる人もいれば、アシストやゲームの組み立てにやりがいを感じる人もいます。あるいは、相手の攻撃を食い止めるデフェンスやキーパーのポジションに最も価値を見出す人もいます。仕事にも様々なプロセスや役割がありますが、どの部分に楽しさを見出しているかは人によって異なります。例えば、ある社員が自分の仕事を構成するタスクの内、30%ほどを嫌っているとしましょう。しかし、その30%の部分を好きだという人の意見を聞いてみれば、多少は認識が変わる可能性があります。さすがに30%を0%にするのは無理だとしても、20%くらいに低めることはできるかもしれません。これは、モチベーションの向上に直接結びつかないまでも、ストレスの低減という点において重要であるように思われます。個人的な話になりますが、私は事務的な(特に手書きを伴う)作業が好きではありません。しかし、そうした仕事が好きだという人の意見を聞くことによって、それらの仕事に対する抵抗感を和らげることができた経験があります。その人曰く、「最近は文字を書く機会が減っているし、漢字だって忘れているでしょう。手書きで文字を書くのは貴重な機会だし、漢字を思い出すきっかけにもなりますよね?それに、私は文字を書くと気持ちが落ち着くのですよね。」 なるほど・・・、とはいえ、その話を聞いたからといって、決してそれらの事務的な作業を好きになったわけではありません。ですが、そうした仕事の意義を多少は感じられるようになったのです。おそらくこれは、自己中心的な枠組みの固定化から一定程度、リフレーミングが行われた結果であろうと思われます。

 もっとも、現実には、仕事のどの部分が楽しいのか、職場においてそのような会話をする機会はあまり多くないのが実態ではないでしょうか。是非とも、仕事の楽しさに関する会話を部下と交わしてみてください。1対1ではなく、3~5人程度で、また、業務上のコミュニケーションにおいて、というよりも、雑談の中で行うのがよいでしょう。

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