当社にて実施しているエンゲージメント調査では、18の詳細項目においてエンゲージメント・スコアを算出しておりますが、詳細項目別に低スコアであったワースト5が次の項目です(本稿執筆時点)。
- 仕事自体の楽しさ 2.60 (仕事が楽しく、活力がわいてくるように感じる)
- 承認感 2.77 (上司や同僚から褒められたり、高く評価されたりしている)
- 職場環境 2.86 (職場の物理的環境は良好である)
- ワーク・ライフ・バランス 2.97 (⑱ワーク・ライフ・バランスは適切である)
- 誇り 2.98 (勤務先に誇りを感じる)
各設問において、強く感じる=6、感じる=4.5、多少感じる=3、あまり感じない=1.5、全く感じない=0として平均値を算出
これらの内、管理職によるリーダーシップが一定程度影響しそうな項目は、「仕事自体の楽しさ」、「承認感」、「誇り」、「ワーク・ライフ・バランス」であろうと思います。「職場環境」は、備品、設備・機械・道具、広さ、明るさ、温度、音、休憩所、トイレ、更衣室などの物理的環境を指していますので、無関係と言えないものの、管理職によるリーダーシップの影響は限定的と考えられます。リーダーシップによる直接的な影響が特に大きいと考えられるのが「承認感」です。これまで企業・団体単位で実施してきた組織別エンゲージメント調査では、ほぼ全てのケースにおいて「承認感」が3.0を下回る低い状態でした。全体的にエンゲージメントが高い組織においても「承認感」だけは低スコアにとどまっているのです。日本人は他者を褒めたり、認めたりするのが苦手なのでしょうか。
やや以前のものではありますが、日本生産性本部による「第3回 職場のコミュニケーションに関する意識調査結果」(2014年)では、褒める課長が78.4%いる一方、それを感じる一般社員は48.6%、というデータが掲載されていました。私が担当させていただく管理職研修においては、過去2週間程度で部下を褒めたかどうかを受講者に聞いておりますが、該当者は、おおむね4割程度です。それでも、意外と部下を褒めている管理職は多いのだとは感じていたのですが、実態としてそれは、あまり部下には伝わっていないのかもしれません。
さて、その原因は何でしょうか。
1.感想、確認にとどまっている
「よくやっているね」 「問題ないよ」 「順調だね」
これらの表現は肯定的ではあるものの、単なる業務上の感想や確認程度にしか捉えられていない可能性があります。よくやっていると見える根拠、問題なく順調に進んでいると評価できる根拠を伝えなければ承認感にはつながりにくいでしょう。
2.感謝にとどまっている
「昨日の会議資料、準備してくれてありがとう」
これは、感謝ではありますが、承認感を満たすには不十分です。
「昨日の会議、参加者からの質問が多かったけど、○○さんが一つ一つ丁寧に資料を用意してくれたから、最後までスムーズに進められたよ。助かった、ありがとう」
これなら、助けられたことの具体的な根拠を伝えており、「自分の仕事ぶりを認めてもらった」という感覚につながるのではないでしょうか。
3.「結果」だけを褒めて、能力やプロセスを褒めていない
職業上において人が他人を褒めるのはどのような場面でしょうか。おそらく、良い成果をあげたときに褒めていることが多いと思います。つまり、「結果」を褒めているわけです。
業績=能力×意欲という公式があります。良い成果をあげたと言うことは能力が高かったからかもしれませんし、行動に優れていた(=意欲的に取り組んでいた)からなのかもしれません。結果を褒められるのみならず、発揮された能力や、行動といったプロセスを褒めてもらった方が、おそらくは有能感や自己肯定感が高まりやすいはずです。
4.相対的伸長度を評価していない
仕事の結果に不十分さが見られた場合には、結果を褒めることは、より少なくなりがちです。しかし、成果が十分でなかったとしても、以前よりも改善・進歩が見られるのであれば、結果の不十分さを指摘しつつも、「以前よりずいぶんと良くなったね」など、相対的伸張度を褒めて成長感に結び付けることが望ましいでしょう。
以上、褒めているつもりでもそれが伝わっていない原因と対策について考察してみましたが、そもそも、部下に対する肯定的なフィードバックが少なすぎる管理職もいることでしょう。
その原因が照れくささにあるのであれば、次のような承認方法もありますので試してみてください。
1.存在を認める
「○○さんがいてくれて助かるよ」 「○○さんのおかげで今回は上手くいったよ」
こうした表現は効果抜群で、その割には比較的言いやすいセリフかと思います。ただし、乱発すると効力を失いますのでご注意を。
2.本人に言わず、第三者に伝える
「○○さん、最近すごく頑張っていてね、○○さんの交渉力と粘り強さには感心させられるよ」
こうした会話はかなりの確率で本人の耳に入ります。他者に話したこと自体が、さらに承認欲求を高めることになるでしょう。
ところで、18の詳細項目の内、最低スコアとなったのが「仕事自体の楽しさ」でした。どのような仕事を楽しいと感じるか、これは個人の価値観に依るところが大きいとは言え、エンゲージメントを低下させる影響が最も大きい項目である以上、管理職としても手をこまねいているわけにはいきません。

