積極的な執務態度を引き出すためには動機づけ要因を部下へ提供していかなければなりません。No.5-2「衛生理論の活用」にて述べたように、動機づけ要因には、「達成」、「承認」、「仕事そのもののおもしろさ」、「責任」、「成長」などといったものがありました。例えば、部下に新たな仕事の割り当てをする場合に、その仕事の意義や、組織にとっての重要性などを明確に伝えることができれば、部下はその仕事に責任ややりがいを感じて努力の程度を引き上げるかもしれません。そして、その仕事の要求能力が当人の能力レベルよりも上のレベルであったとすれば、仕事を成就させた場合に得られる達成感や成長感はより大きなものになるでしょう。また、目標水準のすり合わせは当然行うにしても、仕事のやり方は部下に任せ、一定の権限を与えれば、自分で決められる範囲が広がることにより仕事のおもしろさが増すことになります。さらに、仕事を成し遂げることによって顧客から感謝される、上司から評価されることの期待感があれば職務への取り組み姿勢はより積極的になると考えられます。
したがって、部下に仕事を割り当てる際には、次のような行動を心がけることでリーダーシップが成立しやすくなると考えられます。
- 仕事の意義を語る(たとえそれが一見つまらないと思われる仕事であったとしても)
- 当人にとって多少難しい仕事の場合、難易度が高い仕事であるということを認識させつつ、それを成し遂げることの意義(その仕事の成果による組織的意義、あるいは、当該部下の成長という個人的意義)を伝える
- 細部については任せ、可能な限り権限委譲する
また、仕事の終了時点(業務管理上における統制段階)では、次のような行動がリーダーシップの成立につながります。
- 仕事が終了した段階では、まずはねぎらいの言葉をかける
- 成果について公正な評価を伝える
- 成果のみならず取り組み姿勢やプロセスについても評価の対象とする
褒めるべき点は褒める、ということが必要だということです。もっとも、この「褒める」ということは、実は結構くせものなのです。なぜなら、過剰な評価は部下の成長を阻害する可能性があると考えられるためです。
適切な部下の褒め方については、いずれ改めて示していきたいと思います。(初回掲載 2010/07/29)