管理職においては、部下の職務行動や結果について何らかのフィードバックを示すことが頻繁に求められます。望ましい行動や結果に対しては肯定のシグナルを送る事によって、部下のモチベーションが向上し、その行動に対する意識がより強化されていくことが期待できます。一方、不適切な行動や仕事の結果に対しては、管理職として修正を促していくことが必要です。
もっとも、行動や結果の望ましさにおける程度には差があります。その段階に応じた対応ができるようになれば、効果的に部下の有能感を高められたり、不用意にモチベーションを低下させたりしてしまうことを避けられるでしょう。部下への対応のみならず、他者とのやりとりでは相手の受容度に配慮することが必要です。では、部下の行動や結果の望ましさの程度にはどのくらいの段階があるのでしょうか。望ましい順にあげていきますと、次の8段階が考えられます。
- 卓越して優れた状況
- 期待以上の状況
- 標準的な状況
- 標準をやや下回りそうな状況
- 軽度の支障が見込まれる状況
- 中程度の支障が見込まれる状況
- 明確な支障が見込まれる状況
- 事故レベルの支障が見込まれる状況
1.~3.は望ましい状況にあり、肯定的なフィードバックが必要となる行動や結果です。
4.~8.は行動修正を促すことが必要と考えられる状況です。
ただし、4.の「標準をやや下回りそうな状況」では行動修正を促すべきか留意が必要です。例えば、部下が自ら創意工夫しながら積極的に取り組んでいるのであれば、上司はあまり口出ししない方が良いでしょう。自己決定感を奪って意欲に水を差す事になりかねないからです。とは言え、若干の支障であってもそれが大きな事故に繋がりかねないような性質の仕事であれば、早めにその芽を摘み取ることが必要です
また、最悪の状況である8.「事故レベルの支障が見込まれる状況」は以下の3つのパターンに細分化して考える必要があります。ひとつは、うっかり、ケアレスミスによって引き起こされてしまった場合であり、必ずしも、本人の能力不足や怠惰によるものとは言えない場合です。二つ目は、無知・無能と言った、能力の低さに起因する場合です。そして三番目には、鈍感であったり、怠惰であるなど、望ましい姿勢の欠如による場合です。したがいまして、部下の行動や結果の望ましさの程度には10の段階が考えられます。
- 卓越して優れた状況
- 期待以上の状況
- 標準的な状況
- 標準をやや下回りそうな状況
- 軽度の支障が見込まれる状況
- 中程度の支障が見込まれる状況
- 明確な支障が見込まれる状況
- 事故レベルの支障が見込まれる状況(ケアレスミスによる場合)
- 事故レベルの支障が見込まれる状況(無知、無能による場合)
- 事故レベルの支障が見込まれる状況(鈍感、怠惰による場合)
上司としては、それぞれの段階に応じて適切なフィードバックの方法を選択することが求められます。次回はフィードバックの方法について検討していきます。