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No.6-2 音声によるコミュニケーションと文字によるコミュニケーション

 IT化以前の時代は、仕事上のコミュニケーションにおいては「音声」でのやりとりが中心でした。「音声」でのやりとりというのは、直接会って話したり、電話で会話をしたりすることです。しかし、IT化の進展により「文字」によるやりとりが大幅に増えました。ソーシャルメディアの普及も相まって、今や携帯電話の通信量においても音声通信をテキストデータ通信が上回っています。あまり認識されていないようですが、文字によるコミュニケーションが増えたことは、組織マネジメントにいくつかの問題をもたらしています。
 第一に業務効率の悪化です。電話なら2~3分で伝えられることも、文字にするためにはその何倍かの時間を要することになり、結果的に時間効率が悪化します。一通のメールを打つのに10分以上かけていることは珍しくないのではないでしょうか。しかも、メールの返信はリアルタイムで帰ってくるわけではありません。翌日かもしれませんし、翌々日かもしれません。多くの人が2~3分で済む仕事を2~3日かけて行っていることになります。
 第二には、コミュニケーションに齟齬を来している可能性があることです。音声コミュニケーションの場合、人は相手の話している内容そのものよりも、どのような表情や口調で話しているかによって、微妙なニュアンスを感じ取ります。また、相手に難度の高い依頼をしたり、相手の意に添えない結果を伝えたりする場合は、感情を込めて話すことにより相手の納得を引き出したり、人間関係の悪化を最小にとどめたりすることが可能になります。感情を込めなければならないやりとりが職務上には意外と多いものですが、感情を込めやすいのは文字よりも音声です。文字に感情を込めようとしても形式的な表現にしかなりませんから、やはりこうした場合は音声によるやりとりが望ましいということになります。
 三点目の問題は、人材育成を阻害している側面があることです。顧客など外部との連絡において電話を用いていれば、その内容が周囲にも聞こえますので、上司は部下の対外的コミュニケーションの内容をある程度把握することができます。もし、部下のやりとりが不適切であれば、上司として指導することができるわけです。文字によるコミュニケーションが中心となってしまうとそうした指導機会が減少してしまいます。近年は外部へのメール送信において、上司にもCCメールを同時に送ることをルール化している企業も増えていますが、これでは上司の負担が増すばかりではないでしょうか。
 確かに、通達性の高い内容や、理屈を伝えるのが中心である場合、つまり、業務的コミュニケーションにおいては文字によるコミュニケーションの方が適していると考えられます。やりとりの記録を残すことも出来ますし、正確性を期す事にもつながるでしょう。かといって業務的コミュニケーションの全てを文字によるコミュニケーションで行うことには非効率を伴います。音声によるコミュニケーションの大切さについても今一度見直してみましょう。(初回掲載 2013/11/11 補筆2023/04/12)

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