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No.6-3 計画段階に必要なコミュニケーション

 コミュニケーションの具体的な必要性を理解するために、「計画」、「割当」、「実行」、「統制」、「改善」といったマネジメント・サイクルの各段階においてどのようなコミュニケーションが必要になるのか見ていくことにしましょう。

 まずは、計画段階のコミュニケーションですが、No.2-1計画 ~計画立案の基本ステップと留意点において示したように、仕事の計画を立てる上では情報収集というプロセスを踏む必要があります。この情報とは、目標を達成するための手段であったり、反対に阻害条件であったりします。それらの情報などを基に意思決定を行い、計画を立案していくわけです。もう少し詳しく言えば、意思決定を支える資源には、情報のほかに知識、視点(ものの見方)、能力があります。そして、これら資源の最も身近な持ち主はあなたの部下であるのかもしれません。チームのリーダーであるからと言って、情報、知識、視点、能力のあらゆる点において部下に勝っているとは限りません。最善の意思決定を行い、計画の実効性を高めるためには、部下の持つ情報や知識、そしてこれらに各人の視点を加える事によって形成される意見を引き出していくようなコミュニケーションが必要になります。

 とは言え、上司と部下の関係はややもすると上下関係で捉えてしまい、上司はリードする立場という固定観念にとらわれている管理職は少なくないようです。そのような考え方では自分がチームの中心であるべきだ、決めるのは自分だという意識のもと、部下の意見を引き出していくことの優先度が低下してしまいます。最終的に決定するのは管理職自身であるにせよ、計画立案のプロセスにおいては部下の意見を最大限に引き出していきたいところです。もちろん、部下としても自分の意見が採用されるとすれば自己決定感を満たすことにもなります。計画づくりに部下を参画させることは、計画の合理性を高めるのみならず、計画に対するメンバーの所有感を高める、つまり、合意性を満たすことにもつながります。

 ただし、前提条件があります。それは心理的安全性が確保されていることです。メンバーが「こんなこと言ったら馬鹿にされるのではないか」、「下手に意見を言えばやぶ蛇になるのではないか」という感情を持っていれば意見はあまり出てこないでしょう。欧米社会では会議などの場で意見を言わないのは無能と見なされる傾向が強いようですが、個人的な感覚では、意見を言っていないからと言ってその人が無能であるとは限らないように思います。無口だけれども質問をしてみればそれなりの意見を持っている、などということはよくあります。したがって、部下との関係は日頃からアサーティブなものにしておくことが重要です。むしろ、計画案を話し合うときには、上司としては部下に相談するような姿勢で臨むのが良いように思われます。

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