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No.2-1 計画 ~計画立案の基本ステップと留意点

 仕事に着手するに当たっては、誰が、何を、どのように、いつまで、といった計画を立てて臨むことが、仕事の品質確保と納期遵守のために必要です。なお、ここでいう計画とは、1日の時間をどのように仕事に割り当てるかと言った、小さな単位のタイムスケジューリングに関する技術のことではなく、やや大きめの単位で捉えた業務計画、もしくは、事業計画の話です。基本的な計画立案のステップは次の通りです。

  1. アウトプット(目標)を明確化する
  2. インプット(プロセス)を明らかにする
  3. 達成手段や阻害条件等に関する情報を収集する
  4. 複数案を案出する
  5. 各案を評価し最適案を選択する
  6. プロセス・手段を精緻化する
  7. 時間軸に当てはめる

 ここでは、計画立案において、管理職として特に留意しておきたいポイントについて述べたいと思います。

 第一には、必ず複数の案を考えて比較検討すべきだということです。単一の案に飛びついて実行に移すことは行き当たりばったりで、思いつきのやり方ということになり、望ましい成果を得られないということにかねません。私は、研修の中で、ある課題(ゲーム)について、5~6名のグループによって計画を立てて、その計画に基づいて作業してもらうという、マネジメント・サイクルに関する実習を行うことがあります。計画と実行はそれぞれ、時間制限がありますが、時間枠を目一杯使って、様々な手段を考えようとするチームが高い成果を上げる傾向にあります。単一の案に飛びついたチームは、計画時間を余してしまいますが、その単一案が実行段階でうまくいかないと気づいたときに、やり方を柔軟に変更させて臨機応変に対処するということが出来ないようです。つまり、計画の質を高めるのみならず、仕事の実行段階において、仮に計画した方法がうまく行きそうにないと判断された場合にどのような手を打つかという代替手段を用意しておくためにも、複数案を考えることは有効なのです。

 第二に留意すべきは、計画立案に当たっては、なるべく実行に関わるメンバーが、その意思決定に参加するべきであると言うことです。経営学におけるこれまでの様々な動機づけ研究から、人間のやる気を支える一つの要因に、「自己決定」というものがあります。これは要するに、人は自分で決めたことについては意欲的に遂行するという考え方です(*)。ですから、他人が決定したことを仕事として与えられるよりは、ある程度メンバーの意見が反映されている方が高い成果を期待できるのです。意思決定の場においては、リーダーは自分の考えを表明することのみならず、メンバーの意見を引き出すことについても注力すべきでしょう。前出の研修ゲームにおいては、実行段階において、多くの人が活発に取り組んでおり、修了後に感想を訊ねると、「(作業段階の)モチベーションが高かった」という発言がよく聞かれます。これは、ゲーム実習のおもしろさのみによるのではなく、自己決定に基づく作業であるからということに起因している部分が大きいのではないかと推測されます。そもそも、複数の人間が計画に関わった方が、計画の精度や客観性が向上するというメリットもあります。

 第三には、普段取り組んでいる仕事の大半がルーチンワークであるという場合、あえて計画などを立てずとも、定まった手順に従って遂行すればよいことになりますが、仮にルーチンワークであったとしても、あえて白紙の状態から計画を立て直してみることが、業務改善の視点から有効な場合があるということです。

*自己決定による意欲の向上としては、例として次のような考え方があります。

  • 「計画を立案し、成功させることは最高の満足の一つであり、計画を立案し、提案し、実行する可能性と自由は、すべての社会階層においても、担当者の熱意と活動を増大させる」(Fayol)
  • 「将来自分に関わってくる意思決定に参加する機会が与えられている人は、その機会を与えられない人と比較して、高いレベルで遂行を行う」(Vroom)
  • 「内発的に動機づけられた行動は、人がそれに従事することにより、自己を有能で自己決定的であると関知することの出来るような行動である」(Deci)

(初回掲載 2009/10/31)

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