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 前稿(6-9フィードバックすべき部下の行動10段階)では、管理職として部下へフィードバックすべき10の段階について取り上げました。では、上司からのフィードバックとしてはどのような対応が考えられるでしょうか。望ましい行動や結果に対しては肯定的なフィードバックが必要となりますし、望ましくない状況に対しては行動修正を促すこと(=建設的否定)が必要です。

 肯定的なフィードバックに対する受け手の受容度は高くなりますが、否定的なフィードバックにおいては有能感や自己決定感の低下がもたらされる可能性があり、受容度は低下するでしょう。肯定にせよ、否定にせよ、やはりそこにはいくつかの段階があると考えられます。管理職としては複数の段階のフィードバック方法を用意して、部下の行動や結果の望ましさの程度に合わせて用いていくことが望まれます。

 フィードバックには、受容度の高い順に、次の10段階が考えられます。

肯定的 フィードバック1称賛最上級の承認を示す•意識を強化できる
•有能感の醸成
2承認褒める、認める
肯定も否定も しない3見守り 特に口出しをせず、自主的な改善を待つ•自己決定感を維持できる
•行動修正の効果は低い可能性
行動修正を促すフィードバック4事実の伝達主観としての評価を伝えるのではなく、望ましさからのズレのみを指摘する•自己決定感を維持しつつ気づきを促す
•相手により行動修正の効果に差
5質問どのように修正するのかを訊ねる•客観的で気づきを促す効果
•行動修正の効果が高まる
6疑問見込まれる支障を示してどう対処するのか訊ねる•客観的で気づきを促す強い効果
•自己決定感がやや低下
7提案上司から対処策を助言する•安堵感を与えられる
•自己決定感が低下
8注意部下の行動を否定し、修正を促す•修正すべき意図がはっきり伝わる
•有能感が低下
9命令対処策を示してその実行を強く促す•修正すべき意図がはっきり伝わる
•自己決定感が低下
10 叱責再発の防止を意図して部下の行動を強く否定する•修正すべき意図がはっきり伝わる
•有能感の低下と自信喪失の可能性

     1.「称賛」と2.「承認」は肯定的なフィードバックですので受け手の受容度は当然ながら高くなりますが、6.「疑問」の辺りになってくると否定の度合が強くなってくるため、受け手の受容度は低下し始めます。8.「注意」や9.「命令」、そして10.「叱責」となると有能感や自己決定感の低下をもたらす可能性が強く、受容度は低下するでしょう。場合によっては、自信の喪失、あるいは、反発を招く可能性もあります。したがいまして、軽微な行動の誤りに対して重たいフィードバックをしてしまうと心理的安全性が失われ、部下との人間関係や職場風土の悪化を招くかもしれませんし、管理職としてのリーダーシップが疑われることになりかねません。管理職においては、部下の行動や職務結果における望ましさ、あるいは、望ましさからの外れ度合いに応じたフィードバック行動が求められます。

     なお、たまたま部下の行動の望ましさにおける10段階と段階数が同じになりましたが、必ずしも1対1の対応関係になるとは限りません。部下の行動のひとつに対して複数のフィードバック方法を用いることが必要な場面もありますし、反対にひとつのフィードバック方法を複数の行動レベルへと適用させることも可能です。

     次稿では、部下の行動の望ましさにおける10段階に対して、どのフィードバック段階を適用させるべきか、具体的に考えていきます。

     なお、11段階目として「罵倒」が考えられますが、これは破壊的否定でありハラスメントになります。行ってはいけないことは言うまでもありません。

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