組織原則には「権限と責任一致の原則」や「権限委譲の原則」というものもあります。権限委譲にはどのようなメリットがあるのでしょうか。それは、第一に、正確な情報に基づいた意思決定ができることです。現場の情報や知識に通じているのは、現場に最も近い社員です。より正確な情報・知識に基づいて判断し対処すれば、良好な結果が期待できます。とはいえ、その情報や知識を上司に伝えれば、上司の優れた判断力によってさらにより良い意思決定が出来るのではないかということも考えられます。しかし、そうすると情報伝達の正確性が問題になります。部下の持っている情報・知識が上司に正確に伝わる割合は案外低いものかもしれません。なぜなら、現場の情報・知識には一定程度の暗黙知が含まれていることが多く、伝達が必ずしも容易ではないからです。
第二に、意思決定のスピードの問題があります。上司に状況を伝えて、上司がそれを判断する、場合によっては、さらにその上の上司の判断をも必要とするとなれば、時間の経過を要することになり、対処にあたっての適切なタイミングを逸することになりかねません。
第三に、上司が戦略的な職務に専念できる時間が増えることです。
第四としては、社員の意欲向上が期待できることが挙げられます。権限が委譲されていると言うことは、自分で決められるということです。人は、他人から決められた方法のみによって仕事をするよりも、自分で考え、やり方を決めていくことに喜びを見出すものです。このことは、過去の様々な実験や研究の結果、実証された法則であると言って良いでしょう。意欲が高まれば、多少困難な目標についてもやり遂げようという気持ちが高まり、「遂行責任」の面でも望ましいと考えられます。
そして、五番目には、社員の能力向上の効果が大きいことが挙げられます。常に与えられたやり方のみに従うよりも、自分で考え、問題を解決する機会が多い社員の方が、成長可能性が高いことは説明するまでもありません。
さらに、第六として、結果責任への納得性を高める効果があることが挙げられるでしょう。
さて、権限委譲というのは良いことずくめのようですが、デメリットはないかといえば、やはりそれはあります。
権限委譲のデメリットについても留意が必要です。(初回掲載 2010/04/04)