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No.5-9 「褒める」を考える2 ~ 部下を褒める必要はない

 私はサラリーマン時代、あまり部下を褒めることはしていませんでした。残念ながら、自分の預かる部門の業績は、お世辞にも良かったと言えることが少なく、部下の成績は目標を下回ることがほとんどであったためです。しかし、こうした私の姿勢に対しては、部下の側から見れば不満が多かったのではないかと思います。
 ある日、部下の一人が、顧客に提出する報告書をまとめたので見てほしい、と言ってきました。私は、一通り目を通して「ご苦労さん」とだけ答えて部下を帰しました。しかし、この部下は、一旦席に戻ったものの、すぐに立ち上がって私の方に再びやって来ます。「どうして褒めてくれないんですか!?」 顔を少しこわばらせてそう言うのです。私から見れば、褒めるほどの内容ではないのですが、その部下にとっては褒められるべき仕事であると自己評価していたわけです。つまり、私が設定している基準には達していなかったものの、その部下にしてみれば、少なくとも自分の考える達成基準は満たしている、自分はやり遂げたのだという感覚を持っていたのです。その時私ははっとしました。自分の設定する基準だけで部下を評価していたのでは、目標達成に困難が伴うのが一般的であるこの時代、私の部下はほとんど褒められる(=肯定される)機会のない状況が続いているのだと気がついたのです。いくら成果が上がっていないからと言って、常にこれでは部下の意欲を阻害することになってしまいます。
 私はもっと部下を褒めてあげなければと反省しました。とはいえ、褒める習慣の身についていない人間が、部下のことを褒めようとしても、どうしてもぎこちなく、わざとらしくなってしまいます。わざとらしい褒め方は逆効果だと言われています。統制の手段として褒めていることが部下にも伝わってしまい、しらけたムードになってしまうのです。
 そこで、私は悩みながら考え抜きました。結論は、必ずしも部下を褒める必要はない、と言うことです。(初回掲載 2012/01/18)

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