上司が高い人間性を持っていればリーダーシップは成立しやすくなります。部下の立場からすれば、仕事ができるけれども常に部下に冷たく厳しく接する上司より、仕事は多少できずとも、明るく、他者への配慮に優れた上司の方に従いたいと思う人が多いのではないでしょうか。
人間性という言葉を一言で説明することは大変難しいと思います。私は研修の中で、上司のリーダーシップ源泉について部下の立場から考えてもらう討議を行っています。受講者が挙げる要素は実に多岐に渡りますが、意見の多くが人間性に属することなのです。やはり、リーダーシップを成立させる要素として人間性は大きな源泉と言えそうです。受講者から提示される意見は、具体的には次のようなものです。
- 信頼できる
- (自分を)信頼してくれる
- 任せてくれる
- 責任をとる
- 情熱的である
- 信念を持っている
- 適度に声をかけてくれる
- 相談に乗ってくれる
- どっしりとした安定感がある
- ぶれない
- 向上心を持っている
- 挑戦的である
- 人格的に優れている
- カリスマ性がある
などと言ったことです。
上記の要素の中には簡単には身につけられないようなものが少なくありません。例えば、人格を高めるということは、一朝一夕に成し遂げられることではありません。けれども、少なくとも、管理職として任命される以上は、前述した要素の内、いくつかは持ち合わせていることでしょう。部下との適度なコミュニケーションが図られていれば、そうした要素は部下からも認めやすくなると思われます。また、熱意を持って仕事に当たり、結果についての高い責任意識を持つといったことは、ある程度は身につけて行きやすい態度ではないでしょうか。
管理職という立場であっても、係長のようなロワーマネジャーであれば、依然として実務的な仕事が中心でしょうから、仕事上の実力が高いというだけでも、ある程度はリーダーシップ源泉は足りるかもしれません。しかし、課長以上のミドルマネジャーでは、業務における一定の方向性を決定したり、あるいは、部下の行動を決定したりする権限がより大きいわけですから、それだけ部下から信頼されなければならない立場であることを認識する必要があります。信頼を得るためにも、仕事が出来るだけではリーダーシップ源泉は不十分なのです。
もちろん、人当たりがいいだけで、仕事上の実力や識見の低い上司がリーダーシップ源泉を欠いていることは言うまでもありません。(初回掲載 2011/10/01)