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 管理職の仕事実践術
 1.組織を理解する

(2)組織原則と今日的解釈〜@専門化の原則(2009/10/18)

 組織を有効に機能させていくためには、守るべき原則がいくつかあるとされています。代表的な組織原則は、@専門化の原則、A権限と責任一致の原則、B管理範囲適正化の原則、C命令一元化の原則といったものです。

ここでは、それぞれの内容に加えて、現代組織に適用させる上での現実的な解釈を考えたいと思います。まずは、専門化の原則からです。

専門化の原則とは、職務は類似した知識、技術、経験によって構成されているべきであるという原則です。職務の習熟度は、反復によって高まるため、職務範囲を狭く限定して繰り返し仕事をしていくことが能率と習熟の観点から効果的であるという考え方に基づいています。専門化の原則についての理解を助けるために、「バベッジの原理」を用いて説明してみましょう。バベッジとは、英国の数学者で、コンピュータの父と呼ばれた人です。簡単に言えば、バベッジの原理とは、仕事を専門化させる(分割する)ことによって、より多くの採用候補者が現れ、人件費を抑制させることが出来る、といったものです。
 
 今ここに、A,B,C3種類の仕事がそれぞれ一人分ずつ発生したとしましょう。この3種類の仕事を実行するために、3人の人を雇わなければなりません。Aという仕事はそれをこなすために90の能力が必要であり、Bという仕事は60の能力が必要で、Cという仕事は30の能力があればこなすことができるものとします。では、3種類の仕事に対してどのように人を当てはめるべきでしょうか。一つの方法として、A,B,Cそれぞれの仕事に一人ずつ専門的に担当させる方法があります。専門化といった場合はこの方法が該当し、上述したメリットを享受することが出来ます。




 このメリットをもう少し具体的に見るために、仕事と人の割当てを別な方法で行った場合と比較してみることにします。別な方法とは、一人の従業員が3種類の仕事を三分の一ずつ分け合って行うというものです。この場合、まず、採用の際に、3人全員について能力90の人を雇わなければなりません。でなければ、一番難しいAの仕事をこなすことができないことになってしまうからです。しかし、いずれも能力の高い人を雇わなければならないとすれば、まず、採用活動の難易度が上がってしまいます。うまく採用できたとしても、通常、能力の高い人には高い給与で処遇しなければなりませんので、人件費効率も低下します。また、従業員からすれば、3種類の仕事いずれ人も習熟するためにはやや時間がかかることになります。さらには、能力の高い人は、Aの仕事には満足するかもしれませんが、Cの仕事についてはつまらない仕事に感じてしまうかもしれません。このことは、従業員の仕事のやりがいの点において好ましいことではないでしょう。したがいまして、やはり、専門化の原則に則って、一つの仕事を一人の従業員が担当することにメリットがありそうです。Aの仕事のみについて大学卒の社員を採用し、Bの仕事については高校卒の従業員でもいいわけです。Cの仕事は、正社員でなくとも、アルバイトの採用などで対応することが望ましいでしょう。つまり、採用活動のしやすさ、人件費効率、従業員の仕事への習熟、仕事に対するモチベーション維持の観点において、専門化の原則は有効なのです。

とは言え、行き過ぎた専門化は、組織にとってマイナス面が大きくなってきます。組織が大きくなるにしたがって(従業員の数が増えるにしたがって)、仕事の内容が極端に狭い範囲に限定され、規模の小さい組織に比較して仕事の量や深さやを要求されるという現象が起こりえます。前記の3種類の仕事がそれぞれさらに細分化されて10種類くらいの仕事にまで分解されるようなケースです。職務分担の数が増えることになると、関連した職務を分担し合う人同士の連絡調整がそれだけたくさん必要になってきます。しかし、処理できるコミュニケーション量には限界があるために、お互いが連絡調整を欠いたまま仕事をするといった事態が発生し、組織としての仕事の整合性が失われる事になりかねません。こうした状況は、セクショナリズムの助長にも繋がります。また、細分化されすぎた仕事は、仕事のやりがいの点においても問題があります。仕事が仕事ではなくなり、単なる作業になってしまうことが危惧されるのです。仕事の範囲が狭くなりすぎると、組織全体に対する自分の仕事の貢献度、すなわち仕事の意義がわかりにくくなってきます。意義がわかりにくくなってくれば、意欲の低下をもたらすかもしれません。

ある程度の専門化は、能率の論理、コストの論理の観点から有効ですが、行き過ぎた専門化は、逆に能率を阻害するばかりでなく、情感の論理の点からも問題があるといえます。規模の大きい組織の場合は、職務設計においてこうした注意が必要です。

一頃注目を集めた、製造業におけるセル生産方式は、それまで極度に専門化されていた職務を集約させるものでした。つまり、専門化の逆をやったわけです。一人の従業員が複数の工程を担当し、かつ、臨機応変に分担を変化させることで仕掛品の量を減らし、全体の生産性が高まりました。このセル生産方式においては、副次的効果として従業員のヤル気が高まったことが想定外のメリットでした。それまで単純作業として一工程のみを担当していたのが、複数工程を担当することで仕事に変化が生まれ、仕事におもしろさが戻ってきたのです。そして、どうすれば、さらに効率的な生産ができるかについて、従業員同士が進んで話し合いをするようになり、さらなる生産性の向上が期待できるというわけです。
 
 一管理職として、これらのことから得られる教訓は、部下に仕事を割り当てる際には、「作業」ではなく、「仕事」を割当てよ、ということです。仕事は、ある程度まとまり仕事として構成されている方が、従業員の創意工夫の範囲が拡大し、そのことが仕事のやりがいをもたらすことになるでしょう。

 まとまり仕事を与えると言うことは、実は、管理職としての様々なマネジメント行動を促進することにもなります。なぜなら、それは、権限委譲を伴うことになりますし、その仕事が部下にとって難易度の高い仕事であれば、OJTや動機づけを必要とする局面も増加することになるからです。ですから、まとまり仕事を円滑に割り当てられるかどうかが、管理職としての一つの力量であると言えます。
 また、前記の例で言えばC仕事を担当する非正規社員に対しても、常に単純仕事の割当てばかりするのではなく、時にはまとまり仕事で当人のやりがいを高めてやる配慮も必要かと思われます。
 

                                

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